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2016.03.08

不作為の罪!?

 中国経済の悪化、新興国の通貨安からの資金流失不安、原油安からの産油国デフォルト懸念、etc. 昨今の世界経済情勢は先の見えない不安に襲われています。 

我が国は? 三寒四温の気温の様な「株価」の乱高下が続く中で、(ゴルフのスコアーでアンダーはOKですが)金利をマイナスにして、景気を刺激すれば企業への貸出金利、住宅ローン金利が下がって、設備投資と住宅投資が増加するだろうという、従来踏襲の発想の元で、新たな政策が打ち出された訳ですが、果たして!?これからの日本経済は、どうなって行くのでしょうか。

 閉塞感と不安で一杯の、多くのサラリーマンの深層心理を想う時・・・

 その大きな原因の一つが、“住宅政策の問題”であると考えます。

 2013年の総務省調査では、日本全体の総住宅数は6,063万戸。 それに対して総所帯数は5,245万戸ですから、この時点で・・・何と、その差の約818万戸が“空き家”になっているのです! もうちょっと解り易く言えば、日本国内の既築の家8戸あれば、その内の1戸が空き家。 その上で、近年でも約90万戸/年の新築住宅は建ち続けているのです。 それを買い(買わされ)続けてきたのが、多くのサラリーマン。 清水の舞台から飛び降りる覚悟で購入(多額の住宅ローン)した家が、ようやくそのローンを払い終えた20~30年経過後に、住み替えを考えて評価をしてみれば“資産価値”がゼロになっていたという、現実に驚くばかり。(そんな馬鹿な!?)

 もう一つは、“年金問題”もそうです。

 これまた、何十年払い続けて、老後にキチント(少なくとも払った金額以上の)給付を期待して真面目に納付してきたにも拘らず、最近は減額と支給開始年齢の先送りのニュースばかり・・・団塊世代の高齢化を迎え、平均寿命まで支給すべくの責任債務が1,500兆円必要(担保すべき)なのに、年金機構の残高は140兆円ばかりとか・・・

(制度破綻は誰にでも解るのに、何も変えられない・変えない)(責任の所在は!?)

 どう考えても、現状の通帳残高(ローン支払い優先で貯金残せなかった)と将来不安から、多くのサラリーマンの“財布の紐”は、硬くなって当たり前となる訳です・・・

 住宅の話に戻ります。

「住宅は買った時に消費税が掛かり、住み始めると固定資産税が掛かる。? 消費財なのか資産なのかさっぱり分からない。」<大和ハウス工業 樋口会長>

「20年で戸建て住宅の価値がゼロになるなんておかしい。 資産が目減りしない(緩やか)ようにすべき。 その一つがリノベーション。」<積水ハウス 和田会長>

住宅業界経営者の(小職に言わせれば)正しい意見や陳情も政治家の皆さんの耳には届いていないようです。 

 ところが、ドイツの住宅政策はちょっと違うそうです。

まず、総住宅数は総世帯数と略同水準の4,000万戸で推移。 需給バランスが取れているので、結果として家の価値が担保されている。 しかし、これは勝手にそうなっているのではなく、15年位前に新築住宅への補助制度を打ち切り、中古住宅への改修(リノベーション)に手厚い補助金を付けるというような政策転換を積極的に図ったから。 それだけでなく、20年先までの都市計画を(政府が)策定し、住宅エリアも厳格に規定しているのだそうです。 街(住宅地)の景観の良さもそうですが、政府が動けば市場までも変わる(変えられる)という事を、見事に実践している訳です。

 “住宅政策”“年金政策”・・・新しい発想が、何も具体的に出てこない中で「選挙互助会(当選目的?)」的なことばかり熱心な日本の政治家の皆さんに対して、不作為の罪を作り続けているのでは!? との素朴な疑問を抱くのは、小職だけでしょうか!? そして、言い過ぎなのでしょうか!?

 住宅問題にしても、年金問題にしても、“将来に希望が持てる”“ポジティブ”な方向へ大胆な舵取りと政策提言&実践を、スピーディにお願いしたいと、心から想う今日この頃です。

 

「1969年以降、500兆円を超える国民の住宅資産がひっそりと消えうせた・・・」

<日経ビジネス2016.2.22特集記事より>

 

2016年3月  三寒四温の候                 代表取締役 松元 收

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